こんにちは、タカタカヲリです。

10年に一度と呼ばれる大きな台風が行ってしまったあと、
季節は一気に、秋のスイッチを入れたかのよう。
風邪ひいちゃった…、という声もちらほら聞こえる今日この頃です。

10月に入ってすぐのこと、

農場長である吉沢正巳さんは、警戒区域に取り残された、牛たちの世話をなさっています。
国は、警戒区域内に生き残った家畜の殺処分を決めたのですが、
吉沢さんはそれに抗い、牧場にとどまり、牛たちに餌を与えています。

地震、津波、そして原発事故。
警戒区域に残された牛たちは、悲惨な状況でした。
牛舎の中は糞尿であふれ、飲まず食わずで餓死していく牛、牛、牛。
死んで行く仲間の横で、それでも、大変な状況を生き抜いた牛たちがいました。
そんな地獄を乗り越えた牛たちに、せめて天寿を全うさせてやりたい。
見殺しにする事なんてできない。
「だって、僕は牛飼いだから。牛が好きだから」と吉沢さんは言います。

ここは福島県浪江町、福島第一原発から14キロ。
双眼鏡をお借りして見ると、たくさんの煙突が立っているのが薄く見えます。
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周辺は人っ子一人見かけません。
空間線量が毎時3~5マイクロシーベルト。
居住制限区域。
この辺りに「住んでいる人」はいない。

除染作業中。汚染土が袋詰めにされてブルーシートがかけてあります。
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途中、道に迷って制限区域に突き当たってしまいました。
「立ち入り禁止」の立て札が立ち、フェンスの壁に大きく「×」の印。
マスクをしたガードマンが「ここは通れません!」と目の前に立ちはだかる。
物々しい雰囲気。


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周りのそんな風景をよそに、
牧場には穏やかな時間が流れています。
原発の事故なんてまるでなかったかのように。

牧場の中ほどに、伸び伸びと腕を伸ばす1本のクルミの木が。
可愛いまあるい実をたわわに実らせています。
「毎年楽しみにしてたんだけどね。もうダメね。放射能がね」
吉沢さんのお姉さまが、木を見上げてつぶやきました。
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空は青く高く、吹く風はすがすがしく、
牧場の緑は目が覚めるように鮮やかなのに。
でも空気は、間違いなく汚染されているのです。
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牛たちの世話をしながらスタッフの皆さんが
「いちごちゃん」「ちびた」「ふくちゃん」一頭一頭に呼びかけます。
それに答えるように「ム~」と鳴く牛たち。
普通の牧場の営みが坦々と紡がれてるように見えるけど、
でも何も残っていかない。

それでも。
吉沢さんはここを“希望の牧場”と名付けました。
原発のそばにこういう牧場がある。
それをみんなに知って欲しい。
そして、忘れないで欲しい。
だから、ぜひ見にきて欲しい。
吉沢さんはそうお話されています。
そして、原発のない社会を強く訴えてらっしゃいます。
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 牛のお墓。

この下に100頭の牛たちが眠っています。一時は毎日毎日、何頭もの牛がバタバタと亡くなっていった日々が。埋葬も追いつかず、遺骸が積み上げられていたそうです。
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                              墓石のかわりのお地蔵さま。牛たちをずっと見守っています。

※希望の牧場では募金のお願いをしておられます。お寄せいただいた募金は動物たちの命をつなぐため大切に使います、とのことです→「希望の牧場」